啓蒙の書は一切読まない。
本屋に立ち寄り、手にとってみることはたまにあるが、買うことは無い。"私はこれで成功した"、"このやり方が一番"などの本を読んでも自分の実にならないと感じている。
ビジネスで成功した人について第三者が書いた本も殆ど興味がない。"偉人伝"のような本を読んでも心が動かない。故に買うことはない。処世術やビジネスのヒントは歴史書を読めば事足りる。書店のビジネス書コーナーには多くの啓蒙書が並んでいるが、成功者の美辞麗句を読んでも心は動かない。

グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた

本書は自分にとって共感する部分が多くある。
グーグルとソニーという世界を代表するブランドを冠した書だが、奇をてらった内容ではなく辻野さんの"等身大ビジネス戦記"という感じだ。本書は主にソニーでの活動について書かれているが、ソニー云々というよりも『歴史を重ねた大きな企業』が自らの力だけで組織変革をする(し続ける)ことの難しさについて項が割かれている。

"成功の復讐"はとても恐ろしい。
各個人は"今やらなければならない事"を頭で理解していても、"それ"が自分のポジションに影響があったり、"それ"をやらなくても当面は現状の維持(実は維持ではなく緩やかに衰退している)ができるのであれば腰を上げようとしない。腰を上げて行動に遷すと周囲は防御にまわる。それを繰り返し組織は衰退してゆく。技術も必要、マーケティングも重要だが、何より変革を成し遂げた創業者のカリスマ性を、その組織の遺伝子として受け継ぐ仕組みがなければ成長し続けるのは難しい。

ともすれば安きに流され進み続けるパワーを忘れてしまいがちになるが、等身大の本書を読むことで改めて"組織の中で尖ることの大切さ"を思い出した。正しいと思うことに、信念を感じることに対して中途半端に折れることなく軋轢を恐れず尖ることの重要性を改めて感じた。

組織運営について、現状維持なんてことはありえない。
変化を恐れず変化を楽しむようでなければ、組織を維持運営することはできない。
自分が関わるこの業界も大きな変動のまっただ中にある。
変動しているにもかかわらず変化を恐れ、変化を面倒くさがり、変化についてゆくための研鑽を避けるようでは直にマーケットやその組織からおいていかれてしまう。

最近は丸くなったかな、と自分自身感じていたが、辻野さんが『尖らないとダメだよ』と背中を押してくれているような気がした。